わたしの全ての物語(仮)

ほとんど海外児童書

絵本『きょうはふっくら にくまんのひ』(メリッサ・イワイ作/横山和江訳/偕成社)

作:メリッサ・イワイ
訳:横山和江
出版社:偕成社
出版年:978-4-03-348600-0

 

6階建てアパートの1階で、主人公の女の子リリはおばあちゃんとにくまんをつくっている。リリは、おばあちゃんに「たいへん、キャベツが足りない」と言われ、6階に住むバブシア(ポーランド語でおばあちゃん)にもらいに行く。ぶじに、キャベツを丸ごともらえたけれど、今度はバブシアに「たいへん、じゃがいもが足りない」と言われ、今度は、2階のグランマ(ジャマイカ語でおばあちゃん)にもらいに行くことにった。

色々な国にルーツを持つ6人のおばあちゃんたちが、マンションの各階に住んでいる。それぞれが郷土料理を作っていて、それぞれが少しずつ材料を切らしていた。おばあちゃんたちが「たいへん」と口にするたび、リリははりきる。けれど、アパートはエレベータが壊れていて階段を上り下りするので、リリもたいへんだ。でも、材料を届けおえるとおばあちゃんたちがよろこぶし、今日は特別な日だから、がんばれるのだ。

6階建てのアパートに住むのは、中国系、ジャマイカ系、イタリア系、メキシコ系、レバノン系、ポーランド系のおばあちゃんたち。中国系のリリのナイナイ(中国語でおばあちゃん)が作るのはにくまんで、キャベツをわけてくれたポーランドのバブシア(ポーランド語でおばあちゃん)がつくっているのはピエロギ。じゃがいもを分けてくれたグランマ(ジャマイカ語でおばあちゃん)がつくっているのはタマレス。呼び名は違うが、どれも小麦粉を練ってつくった生地においしい具を入れた料理のこと。英語ではダンプリングという。具材やスパイスが少しずつ違い、味や形も少しずつ違う。おばあちゃんへの呼びかけ、おばあちゃんたちの口ぐせ「たいへん」が、それぞれの国の言葉で表記されているのも、よかった。住む国がどこであろうと、大切な料理は、ふるさとの言葉で呼びつづけたくなる気持ちがわかる気がする。

読後の感想は、作者メリッサ・イワイのメッセージのことばとほぼ同じだった。「わたしは食べることが大好きなので、家族や友だちが食事を通して仲よくなる物語が好きなんです」そう、その通り。各階に住むおばあちゃんたちが、こんなにご馳走を作っているのには訳があった。これがまた、良かった!リリにとって、このパーティは大切な思い出になるだろう、と思った。

わたしもふと思い出したことがある。もうずっと昔、学生時代にカナダにホームステイしたとき、中国系のお宅にお世話になった。そのとき、ダンプリングを作ってもらった。ダンプリングという英語を初めて口にのせた。そうか、日本語では餃子だ、と思ったっけ。言葉と意味が結びついたとき、そのおいしさとやさしさが結びついた。ダンプリングという単語はずっと覚えているだろうなと思ったのだった。

2023/11/13

 

と、11月に書いていたが、今年のクリスマスウィークにジャガイモのニョッキを作った。この絵本を読んでからずっと、小麦粉を練って生地を作りたかったのだ。茹で上がるとき、とてもワクワクした。たぶんリリと同じ気持ちだったと思う。今度は、ナイナイのレシピで作ってみよう。

 



2023/12/25